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「おい」
「………!?」
気を緩めすぎていた私は漸く、近づいてきた誰かの気配に飛び起きた。
「あ……」
振り返るとそこには、斉藤さんとその他数人。
辺りが暗くなっていることに気がつき、隣にいる男の子に視線を落とすと依然眠ったままだった。
「どうしましょうか……」
「どうした」
私の隣まで来た斉藤さんも男の子に視線を向けて尋ねる。
「迷子です」
私は男の子の頭を撫でながら答えると斉藤さんは僅かに目を見開いた。
「何故お前が……? 迷子石には?」
「行きました。 まだ何も張り出されてはいませんでしたが」
「それで? お前は張ってきたのか?」
迷子石とは迷子の子どもやその親が伝言を残すもの。
この子の親が張り出していないかと見に行ったのだが、まだ訪れていなかった。
そして私はーー。
「私は張ってません」
「………? 何故だ?」
訝しげな表情をする斉藤さんには、事情を話すしかない様だ。
「私には定住場所がありません」
「そういえばそんなことを言っていたな。 それならば少しの間宿に留まればいいのでは?」
「あ~。 私、金子を持っていないので野宿のつもりだったんですけど……。 この子がいるとそれはできないなって」
予感はしていたが、私の言葉を聞いた斉藤さんは呆れ顔をした。
第1章 始まりと出会い end.
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