第11章 新しい主

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「すみません。 お待たせしました。」 「あ、ああ。 それじゃあ行こうか。」 平隊士数人を引き連れ、巡察に向かった。 「雛ちゃんが男装してるの初めて見たな。」 「そうですか? これからは嫌でも見ることになりますよ。」 雛は比較的中性的な顔立ちをしているため、少々のことでは男装には気がつかれることはないだろう。 藤堂さんと話をしていれば、周りから女の方の声が聞こえてくる。 「あの人、えらい綺麗な顔しとるなぁ。」 「ほんま、かっこええわぁ。」 壬生浪士組は嫌われているようですが、美丈夫なら別のようですね。 さすが藤堂さん。 女なら放っておけない男、というわけですか。 「男の俺より雛の方が女に好かれるって、なんか悲しいな。」 「何を言っているんですか。 明らかに藤堂さんのことでしょう。」 女の私が女に好かれるなんてありえませんし。 「いや、雛の方を見てるだろ。」 「そうでしょうか。 見間違えでは?」 そんなことを話していると、1人の女の方がこちらに近づいてくる。 「お勤めご苦労様どす。 うちはお咲と申します。 お名前を聞かせてください!」 「私、ですか?」 「へぇ。」 「どうして私の名前なんかを?」 「そっ、そら…。」 何かを言いかけて頬を染めると、うつむいてしまった。 え、意味不明です…。
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