第11章 新しい主

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なぜに頬を染めるのでしょう。 ちらと隣を見ると、藤堂さんは首を振る。 本名は教えるなということだろう。 藤堂さんに頷き、もう一度前を見てから答えた。 「私は、千里と申します。」 とっさに思いついたセンリという名前を告げると、急に明るくなって笑みをこぼした。 「千里はんどすか。 素敵な名前どすなぁ。」 「……ありがとうございます。」 ニッコリ素早く笑みを作ると、目の前のお咲さんはまた頬を染めた。 なんなんでしょう。 人見知り、とか? それなら話しかけてきませんよね。 それなら、風邪? 「千里、そろそろ行くぞ。」 「はい、わかりました。 それでは。」 「あ、待ってください!」 挨拶をして、先に行こうとすると引きとめられる。 「はい、まだ何か?」 「うち、すぐそばの甘味屋で働いとるんどす。 お時間があればいらしてくださいな。」 なるほど、宣伝ですか。 「はい、ご紹介ありがとうございます。 機会があれば、寄らせていただきますね。」 とかなんとか挨拶をしてからその場を去った。
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