第5章 新しい朝

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なんとなく話していてわかったこともある。 この人は話している間目をそらさない。 おそらく嘘をついていないか調べるためだと思う。 それがものすごく自然でそんな気さえしないのだからすごい。 調べられていることにさえ気がつかないだろう……あいにく私には見破られてしまったが。 私も生活しているうちに自然と身についたそれをうまく活用できていることに少し感激した。 実際に生活しているだけではわからないからこういう機会がないと実感することはない。 「山崎さんですね。 山崎さんは剣術、お強いんですか?」 「そうですね……俺は棒術の方が得意です」 「へぇ、すごいんですねぇ」 私が言うと山崎さんはもう一度笑顔を見せてから口を開く。 「私は諸士調役兼観察なんです。 まあ簡単に言うと怪しい人を監視するということです」 そこまで言うと一度言葉を切った。 どことなく言うかどうかを迷っている様に見える。 しかし再び口を開くときっぱりと告げた。 「つまり急に女中になりたいと言い出したあなたも観察の対象というわけです」 では本当に挨拶というよりも偵察をしに来たということですね。 偵察するのにわざわざ話しかけるって……変わってますね。 でも兼ということは二つ仕事があるということ。 ふたつも任されてるなんて素晴らしいです。
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