第6章 筆頭局長

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「お前は?」 「申し訳ありません、挨拶が遅れました。 私はここで女中をやらせていただくことになりました、雛と申します」 「ふぅん……」 私が挨拶をすれば芹沢局長は曖昧に相槌を打ち、そしてそのまま歩き出した。 ……あれ、行っちゃう感じですか。 せめてなにか……まあ例えば「よろしく」とか「頑張れ」とか。 なんでもいいので声をかけて欲しかったです。 一人で自己紹介して寂しい人にみえます……。 などと思っていれば私の心の声が聞こえたのか。 否それはさすがにないと思うが、芹沢局長は急に立ち止まり振り返った。 「後で俺の部屋に茶ぁ持って来い」 「はい、わかりました」 寂しい人脱出! とまあ客観的にみれば可笑しなことを考えてしまっていたというのは勿論私だけの秘密。 それから後ろにいた人も次々に部屋へ戻って行った。 私は最後の一人が部屋へ入るまで見届けると早速台所へ行った。 芹沢局長は一番に部屋へ戻ったからなるべく早く行かないと……。 え、戻る? 私、どこの部屋を借りてましたっけ……? ………これはまずい! 「副長、今よろしいですか?」 「ああ、入れ」 「失礼します」 言ってからささっと部屋へ入る。 来る途中私が小走りしているのをみて隊士が驚いていたのはこの際無視をした。
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