第7章 空白の二年間

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「私、お世話になった方がいる って言いましたよね。」 「はい。」 「そのお世話になった方なんですけど、 実はあったのはひと月前なんです。」 「ひと月?」 私が過ごしたのはひと月の間 ひと月前から数えてちょうどひと月の間だった 「はい、お世話になったのは 少しの間だけです。」 一度言葉を切ってより伝わりやすいよう言葉を探してから再び話し始めた 「私は拾われる前の二年間の記憶をなくしているみたいで。 それまで自分がどこで何をしていたか覚えていないんです。」 「なるほど。 それで疑われると?」 「はい。普通はそんなことは 信じられないでしょう?」 そう、信じてくれるはずがない いや信じるか信じないかは問題ではない どちらにしてもいつまでも隠しきることはできない それなら誰かに話しておく方がいい この人なら土方副長に報告することはあっても必要以上に誰かに話すことはないだろう 「では、それより前は 何をしていたんですか?」 やっぱり聞かれますよね。 なんか二年前の記憶以外は覚えているみたいな言い方しましたし。 「まあいろいろしてましたねぇ。 とりあえず仕事ができるようにと たくさんのことを学びました。」 これは結構昔の話しですけど。
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