47人が本棚に入れています
本棚に追加
空が綺麗な夕焼けに染まっていた。
家路を急ぐのか、黒いシルエットの鳥たちがどこかへ飛んでゆく。
部屋の窓から意味もなく空を見上げ、そのまま視線を落とした。
二階のこの部屋から見える庭。
芝生が綺麗に引きつめられ、木々が陰を作る。
その真ん中にポツリと置かれたベンチは、長年雨風にさらされたせいで色褪せている。
今は誰もいない風景に、私は目を閉じた。
私が見たいのはこんな景色じゃない。
懐かしいはずの景色も、この部屋も、私にはただ無機質で冷たい。
「ケイスケ・・・・・」
愛しい人の名を小さく声にして、私は目を開けると窓辺から離れ椅子に腰掛けた。
ここに連れて来られてから、いったいどのくらい過ぎただろう。
“実家”
そういえば、聞こえはいい。が、私にとってのここは実家である前に“地獄”だ。
最初のコメントを投稿しよう!