悪夢。

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空が綺麗な夕焼けに染まっていた。 家路を急ぐのか、黒いシルエットの鳥たちがどこかへ飛んでゆく。 部屋の窓から意味もなく空を見上げ、そのまま視線を落とした。 二階のこの部屋から見える庭。 芝生が綺麗に引きつめられ、木々が陰を作る。 その真ん中にポツリと置かれたベンチは、長年雨風にさらされたせいで色褪せている。 今は誰もいない風景に、私は目を閉じた。 私が見たいのはこんな景色じゃない。 懐かしいはずの景色も、この部屋も、私にはただ無機質で冷たい。 「ケイスケ・・・・・」 愛しい人の名を小さく声にして、私は目を開けると窓辺から離れ椅子に腰掛けた。 ここに連れて来られてから、いったいどのくらい過ぎただろう。 “実家” そういえば、聞こえはいい。が、私にとってのここは実家である前に“地獄”だ。
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