一章――九十九神

4/36
前へ
/53ページ
次へ
『待って。私をここから出して』 声を頼りに、足を進める。 光がない恐怖など微塵もなかった。 「誰なの?」 当然の疑問を投げかけながら、手を延ばす。 だが、答えは返ってこない。 何かが手に触れ、迷わず掴む。 それは、棒状の物だった。 掴んだ瞬間、声の正体だと確信し黙って持ち出すことにした。 願いを叶えてあげたい。 それに――もう一度、声が聞きたい。 そんな欲が強くなったのだ。 あれから、何年も経つが声を聞いた試しはない。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加