第1話

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芥川・直木賞 女性作家2人 が選ばれたワケ 2013.7.24 07:43 (1/2ページ) 17日に発表された第149回芥川賞・直木 賞(日本文学振興会主催)は、芥川賞は藤野可 織さん(33)の「爪と目」、直木賞は桜木紫 乃さん(48)の『ホテルローヤル』に決まっ た。東京・築地の料亭「新喜楽」で行われた選 考過程と、講評を紹介する。 ◇ □芥川賞・藤野可織さん「爪と目」 ■巧みな技 作中に強烈な自己批評 2時間弱の討議を経て、芥川賞は藤野可織さ んの「爪と目」(「新潮」4月号)に決まっ た。選考委員を代表して会見した島田雅彦さん (52)は「強烈な自己批評が作中に含まれて いた。非常に技が巧みだ」と受賞作について述 べ、選考を振り返った。 藤野さんの作品は、父の愛人で同居すること になった「あなた」の人生を娘の視点からつ づった物語で、二人称を使って展開する。 「『あなた』と呼ばれる愛人のことを描きなが ら、愛人との関係を通じて語り手が変わってい くプロセスも描けている。二人称を使いながら も、自画像を同時に重ね合わせているという読 み方もできる」と高く評価された。 藤野さんの作品と並んで最終投票に残ったの は、いとうせいこうさん(52)の「想像ラジ オ」(文芸春号)と鶴川健吉さん(31)の 「すなまわり」(「文学界」6月号)。いとう さんの作品は、東日本大震災という難しいテー マに取り組んだことをたたえる選考委員もいた が、「安易なヒューマニズムに走っている」と 批判する意見もあり、受賞には至らなかった。 鶴川さんの作品は、大相撲で行司を務めた自身 の経験をいかした細部の描写が評価される一方 で、「実体験を抜きにしたら、ありがちなニー ト小説ではないか」と否定的な声を覆せなかっ た。 最終投票に残らなかった、山下澄人(すみ と)さん(47)の「砂漠ダンス」(文芸夏 号)は「非常に手法的に凝っているが、その手 法を使いこなせなかった」と指摘され、戌井 (いぬい)昭人さん(41)の「すっぽん心 中」(「新潮」1月号)は「一つの芸風を確立 しているが、(芥川賞候補になった)前2作の 方が、圧倒的に今回よりも優れていると思う」 と評された。(山田泰弘) ◇
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