本文

5/9
前へ
/11ページ
次へ
私とウィードは、小さい頃は都心部から遠く離れた村で育った。 私はそこで生まれたが、ウィードは違う。彼は別の街で生まれたが、その街は旧人類に攻められ、崩壊してしまったそうだ。 ウィードの両親は故人。養子として私の家に招かれたのだ。 ウィードはすぐに家族と打ち解けた。勿論、私もウィードとすぐに仲良くなれた。 しかし再び旧人類が、今度は私達の村へとやって来る。私達は10歳を過ぎていた。 村人の大半は逃げ切った……しかし中には捕まって奴隷となった者もいたと聞く。 なにも出来ずに村から逃げてきた……あの時、私に力があればと今でも思う。 「また思い出していたのか?」 ふと、ウィードが小声で聞いてきた。私は答えなかったが、彼はそれが予想が的中したという事だとしっかり捉えたようだ。 「今更な事だ。あの時じゃ俺もお前も無力で仕方ないだろ。」 「あぁ……だが、」 私が何か言おうとしたのをウィードが遮るように話を続ける。 「昔の事を悔やんだって意味がないだろ。それなら、今をどうにかして未来を変える事を考えようぜ。」 「……そうだな。」 ……彼は本当に立派だと私は思う。 彼は二度も住処を奪われた。しかも、一度家族を失っているのだ。それなのに彼は弱音をはかない。少なくとも、私の前で彼が泣くことはなかった。 私よりも悲しみを背負っているにも関わらず、私よりもそれを見せない。 本当に、凄い奴だ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加