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秋葉高校の校庭脇にある花壇にはコスモスが咲き始めていた。晶子はぼんやりと教室の窓から浮雲の様子が夏から秋に変わるそんな青空を眺めていた。だが、その朝のホームルームはいつになく活気があった。伊藤直美先生が持ち出したテーマは文化祭だった。各クラスが趣向を凝らして展示やイベント、喫茶店などを例年企画し実行するもので、全員参加が基本だった。
もちろん、恒例の学校行事なので初めはクラス全体にしらけムードが漂ったが、学級委員の伊藤良平が持ち出したアイデアにクラスの皆が賛否両論に分かれたからだった。
「だから、『萌』、も・え。わかる?メイド喫茶じゃないから」
良平は最初、守勢に立った。
「やっぱり、メイド喫茶を高校生がやるのは問題ありね」
直美が最終結論を出そうとした。
「先生、萌だっていうんだからいいんじゃないですか?」
珍しく、朋美が積極的に手を上げて良平を援護した。
「萌だって、メイド喫茶だって同じでしょうが」
度のキツイ眼鏡をかけたインテリ派の斎藤かおるが独り言のように言った。それを受けて、良平が発言した。
「先生、もう少し僕に趣旨を説明させて下さい。まず、メイド喫茶はやりません。その代り、萌喫茶をやります」
それを聞いて、クラスの大半からドッと笑い声が上がった。それでも、良平は真面目な顔つきで続けた。
「皆さん、この高校の名前を思い出して下さい。そうです、秋葉高校です。これを巷ではAKBと呼んでいます」
それを聞いて、またドッと笑いが起こった。
「AKBって呼んでるのは良平だけだろうが」
将来はプロレスラ―にもなろうかという体格のがっしりした大川賢一が野太い罵声をあげた。
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