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いつか、癒せる日が来るだろうか。
わたしのこの頼りない両手で、先生の心ごと抱きしめて、癒してあげられる日が。
今はまだ、先生の全てを包んであげられるほど、わたしは強くない。
すぐに不安になって、フラフラしてしまう悪い癖は、きっとそう簡単には直らない。
おそらくわたしはその度に反省して、何度も先生に許してもらいながら、少しずつ前に進んで行くのだろう。
でも…。
きっとそのどの場面でも、…わたしが先生を想う気持ちだけは、揺れていない。
先生を守ってあげたいと思う、…幸せにしてあげたいと願う、この気持ちだけは。
先生の柔らかな髪をくしゅっと握り、絡め合った舌を吸いながら、そっと唇を放す。
美しい瞳に自分の姿を映しながら、わたしはふと、今言うべき言葉を見つけた。
「…先生…」
「…ん?」
「おかえりなさい…」
先生の目元が、ふわりと緩んだ。
「…うん。ただいま」
エスカレーターがわたし達を階下に届けるまで、後少し。
深い深い場所へと降りて行きながら、二人はもう一度、甘くて長い口づけを交わした。
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