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「…やっぱ、変わってる。…萌みたいな生き物、初めて見た」
「……」
わたしが複雑な顔をすると、更科くんは吹き出して、明るい声で笑った。
「とりあえず…。
春山先生は、もうすでに、萌なしじゃいられないかもね」
「え?」
「他にいないもん、こんな変な生き物」
「……」
褒められたのか、存在自体をけなされたのか、…おそらくその両方なのだろうけど、わたしはどんな顔をしていいか見当がつかないまま、更科くんの笑いが治まるのを待っていた。
夜が時を刻むにつれ、ぐんと気温が下がって来る。
昼間の暖かい空気が夜露へと姿を変え、触れたブランコの鎖はしっとりと湿っていた。
「…萌は、分かってないだろうけど」
更科くんが、未だ笑みが残る顔で言った。
「春山先生って、萌が思ってる以上に、萌のこと好きだと思うよ」
「…え…」
「これ、言っていいのかなあ。
…先生のイメージ、崩れるかな。
…どうする?聞く?」
「……」
…先生のイメージが、崩れる…?
「聞く」
きっぱりと即答すると、更科くんはニッといたずらっぽく笑った。
「文化祭の時って、…校内をカメラマンが回ってたよね」
「…え…。うん…」
急に文化祭の話になって、わたしは戸惑いつつ頷いた。
「それで、その時撮られた写真が、昇降口前の廊下に貼り出されてたでしょ。注文用に」
「うん。あったね」
「買った?」
「買ったよ」
「春山先生が写ってる写真も?」
「…え、うん…」
わたしは赤くなりながら、頷いた。
他の女性徒に腕を組まれている写真だったけれど、…一枚だけ、先生の笑顔がアップで写されたものがあったので、つい注文してしまったことを思い出す。
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