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「似てんなあ。…いや、お見事」
ぱちぱちと手を叩き、
「椎名お前、姉ちゃん可愛いなあ。羨ましいなあ」
「そう?普通だよ」
「なに喜んでるんだよ、シスコンかよお」
「やめろよ武藤お」
二人がくねくねする様子を無表情のまま見ていると、
「いやあ、お姉さん、こいつなかなかお姉さん離れ出来ないと思いますけど、こんな椎名をこれからもよろしくお願いしますね」
「…はあ…」
機械的に頷くと、武藤は急に祐希の肩をつついて、声を落とした。
「知ってる?椎名。お前の姉ちゃんのこういうの、ロリ顔っていうんだぜ」
「ロリ顔?」
「ロリータ顔ってこと。女児好きの変態オヤジとかに受けがいいんだよ」
「ふーん。そうなんだ」
「……」
…今は、絶対に見てはならない。
今先生の方を見てしまったら、負けだ…っ。
必死で視線を制御していると、祐希が境内の方に顔を向け、あっと声を上げた。
「村山と沢木もいんじゃん」
「そうなんだよ、みんな家族と一緒に来ててさ。偶然会ったんだ」
「ねーちゃん、ちょっと行って来ていい?」
「あ、うん」
祐希が駆け出し、武藤はわたしと先生の顔を見比べるようにしてから、ぺこりと頭を下げてその後を追って行った。
「……」
…武藤…。
あれが、武藤…。
顔を思い返そうとしてみたけれど、眉毛の印象しか残っていなかった。
ふと先生の顔を見上げると、バチッと目が合った。
慌てて逸らし、恐る恐るもう一度目線を上げる。
先生は真顔でわたしの顔をじっと見つめ、
「…別に、ロリ顔は女児好きの変態オヤジだけのものではないよ」
「……」
「まあ、女児好きの変態オヤジが言っても説得力ないかもしれないけど」
「……」
…何と言葉を返したらいいか…。
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