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「先生も?」
「え?」
「先生も、…あったかい?」
「…うん、あったかいよ」
先生の腕が、私の身体を後ろからぎゅっと抱きしめた。
「椎名」
「…はい…」
先生の口元が、私の耳のすぐ傍に降りて来る。
「改めて、言うけど」
直接耳に届く先生の声に、ぴくりと身体が揺れる。
「卒業式の夜、…空けておいて」
わたしは思わず、先生のコートの袖をぎゅっと握りしめた。
「…はい…」
ゆっくりと後方の先生に顔を向ける。
すぐ傍にある先生の瞳には、わたしが映っていた。
「先生…」
胸の奥がきゅうっと熱くなる。
わたしはうっとりと目を閉じた。
…今度こそ、今年最初のキス…。
「せんせー!」
「……」
響き渡った声に、わたしたちは車の方を振り返った。
祐希がむくれた顔をして、後部座席から降りて来る。
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