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「なんで起こしてくれないのっ。ずるいよ、二人だけ初日の出見るなんて」
先生がさりげなく腕を解き、わたしはするりと先生の隣に移動した。
その間に、祐希がわたしの後ろに駆け付ける。
「俺のこと邪魔にして、ひでーよ。かーちゃんに言いつけてやるっ」
「ち、違うよ、だって、祐希ってば起こしても起きないから」
「うそだっ」
「ホントだよ、ちゃんと起こしたもん、3回」
「ぜーったい本気で起こしてない。絶対に手加減したっ」
「…し、してないってば…。…お姉ちゃんはそんな不正…」
本当は全力で手加減したわたしがしどろもどろになっていると、
「…わあー。すげえ」
祐希の顔が、一瞬でオレンジ色に染まった。
慌てて振り向くと、夕陽のようなオレンジ色の朝陽が昇り始めていた。
「……」
見逃した。
顔出す瞬間、見たかったのに…。
祐希は上機嫌で、手すりに駆け寄り、身を乗り出した。
「めちゃめちゃキレイじゃん。…すげー、初日の出、かっけー」
弟を邪魔ものにしたために、早速今年初めてのバチが当たったわたしは、深く反省しながら美しい日の出を見つめていた。
はしゃぐ祐希の背中の向こうで、周りの雲をオレンジ色に巻き込みながら、朝焼けがゆったりとした速度で空を染めていく。
「きれい」
ぽつりと呟いた時、くいっと横から手を引かれた。
驚いて顔を上げると、先生が身を屈め、祐希の目を盗んで素早くキスを落とした。
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