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「いいんじゃないか」
わたしと祐希が、同時に笑顔でピョコっと身体を弾ませる。
「夜中とはいえ、初詣客も大勢いるから、警察も出ているし、危なくは無いだろ」
「…おとうさんっありがとっ」
わたしが嬉しそうに言うと、父は照れたようにはにかんで、
「そうだ。…お前たち、もし心細ければ、父さんも一緒について…」
「いや、それはいい」
わたしと祐希が声を揃えて言うと、父はとてもショックを受けた顔をしてから、しょんぼりとおちょぼ口でソバを啜り始めた。
「まあ、そうね。…二人で初詣なんて、いつまでも出来る事じゃないし」
母も自分を納得させるように頷いた。
「祐希も彼女が出来たりしたら、お姉ちゃんと出かける事もなくなっちゃうだろうし。
二人で行って来なさい」
「お母さん、ありがとっ」
わたしははしゃぐように言って、そっと祐希と目くばせを交わした。
「それに萌だって、きっと来年は素敵なカレシが出来て、弟の相手なんかしていられなくなるでしょう?
滅多に家になんて帰って来なくなっちゃうだろうし。ね」
母が意味ありげに微笑んで言うと、カラカラン、という音が響いた。
3人が驚いて見ると、父が青ざめた顔で箸を床に落としていた。
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