-1-

3/5
前へ
/35ページ
次へ
「いいんじゃないか」 わたしと祐希が、同時に笑顔でピョコっと身体を弾ませる。 「夜中とはいえ、初詣客も大勢いるから、警察も出ているし、危なくは無いだろ」 「…おとうさんっありがとっ」 わたしが嬉しそうに言うと、父は照れたようにはにかんで、 「そうだ。…お前たち、もし心細ければ、父さんも一緒について…」 「いや、それはいい」 わたしと祐希が声を揃えて言うと、父はとてもショックを受けた顔をしてから、しょんぼりとおちょぼ口でソバを啜り始めた。 「まあ、そうね。…二人で初詣なんて、いつまでも出来る事じゃないし」 母も自分を納得させるように頷いた。 「祐希も彼女が出来たりしたら、お姉ちゃんと出かける事もなくなっちゃうだろうし。 二人で行って来なさい」 「お母さん、ありがとっ」 わたしははしゃぐように言って、そっと祐希と目くばせを交わした。 「それに萌だって、きっと来年は素敵なカレシが出来て、弟の相手なんかしていられなくなるでしょう? 滅多に家になんて帰って来なくなっちゃうだろうし。ね」 母が意味ありげに微笑んで言うと、カラカラン、という音が響いた。 3人が驚いて見ると、父が青ざめた顔で箸を床に落としていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1087人が本棚に入れています
本棚に追加