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***** 「わ。さむっ」 外の空気は冷たくて、わたしは首に巻いたマフラーをさらにもう一周巻き付けた。 手を擦り合わせながら階段を降り、門のかんぬきを外す。 「本当に新年なんだね。実感がわかないなあ」 祐希の言葉がやけにしみじみとして聞こえて、その生意気さにわたしは思わず笑った。 車通りのないバス通りを渡り、いつもの公園の方に向かって歩き出す。 「それにしても、ねーちゃん分かりやす過ぎ」 「え…」 「うちのとーちゃんとかーちゃんみたいに呑気な人じゃなければ、嘘だって見抜かれてたと思うよ。 挙動不審だし、OK貰ったときだって喜びすぎだし」 「…そ、そっか。ごめん」 自分の言動を振り返り、確かに、と反省する。 「わかるけどさ、はしゃぎたくなる気持ち。…そりゃー嬉しいよね」 横目でからかうように見られ、わたしはつい赤くなって目を逸らした。 「ていうか、俺も嬉しいし」 「…え?」 角を曲がった瞬間、祐希の顔いっぱいに笑顔が溢れた。 「せんせっ」 手を振りながら、走り出す。 出遅れたわたしは、ちょこちょこと小走りでその後を追った。 「転ぶなよ、祐希」 公園の柵に寄り掛かっていた春山先生が、笑いながらこちらに声をかける。 祐希はあっという間に先生の元に辿り着き、頭をくしゃくしゃと撫でられ、仔犬のようにその手にじゃれた。 「久しぶり、先生!あけましておめでとう」 「うん、おめでとう」 わたしもやっと祐希に追い付き、横に並んで立った。 「あけましておめでとうございますっ」 「おめでとう」 「……」 「なに?」 「いえ…」 自分も頭をくしゃくしゃしてもらえると思っていたわたしは、本気でがっかりしていた。
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