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「じゃあよ、ジョンがバンド抜けるんだったら、一体誰が歌をうたうってんだ?」
狭いアパートの一室。
テーブルに身を乗り出し、眉を歪めながら歯を剥き出しにして問い掛ける、赤い髪の男。
ワンルームの汚い部屋には、だらしなく食べ散らかしたままのハンバーガーの箱とコカ・コーラの瓶、そしてアダルト雑誌が無造作に放り出されている。
「知らねえよ。
何なら俺がハーモニカからボーカルに転身してやってもいいぜ」
ソファーに深々と座って寛ぐ、オレンジ色した髪の男が答える。
綺麗な二重と丸い瞳を吊り上げて、文句でもあるか、と言わんばかりにふてぶてしく笑いながら、目線をテレビから赤い髪の男へ向ける。
「ハッタリも程々にしろよ、嘘吐きジャック。
そもそも君の所為でジョンとミミルが抜けたって言うのに、その態度は無いだろ。
ジョンが居ないなら、もうキャメルズは終わりさ。
このバンドに未来は無いよ」
黒いマッシュルームヘアーの下に厚い丸眼鏡を忍ばせて、肘をつきながら音楽雑誌を捲る座高の低い小柄な男が、目を伏せたまま低いトーンで付け足した。
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