第一章【バンド、脱退】

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 メディと呼ばれた赤髪の男が、興奮したように言い返す。 「なら、もうてめえに用は無えよ! 出ていけ!  俺はお前より演奏もコーラスも上手いメンバーを集める、キャメルズに役立たずは要らねえ!」 「おう、言われなくとも出ていってやらあ! 今後一生、お前と一緒にバンドなんざやらずに済むと思ったら清々する!」 「なら早く出ていけ!  俺はボーイと残ってキャメルズを……」  そうメディが怒鳴り口調で返そうとしたすぐ後に、マッシュルームヘアーの男から深い溜め息が洩れた。 「メディ、いい加減にしろよ。  キャメルズが少ない人気で四年間もやって来れたのは、他の誰でもないジョンのお陰だ。  ファンは皆ジョン目当てだし、あいつの歌声の代わりは何処にも居ないさ。  諦めろよ。……残念だけどさ」  マッシュルームの男が宥めるように、そして少し苛立ったようにメディを諭す。  でも、と続けようとするメディも、彼の言っている事は薄々分かっていたらしく、不服そうにも納得したように顔を俯かせる。  
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