第4章 その素敵な写真家さんは

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時刻は19時を過ぎ、辺りはすっかり暗くなっていた 日は沈んでおり、南から来る夜風が心地好い 私たちはアスターさんを家の前まで送る 「すみません、家まで送っていただて」 「いえ、お気になさらないで下さい。それより今日はお時間を取らせてしまってすみませんでした」 私は深々と頭を下げる 「いえいえ、今日はとても楽しかったですよ。・・それに私、アイさんから「私に観光案内させて下さい!」って言って下さったとき本当に嬉しかったです・・」 「・・え」 私は想定外の台詞に少し驚いたが、アスターさんは優しい表情で話を続ける 「誰でも「いいな」と思えるものや「素敵だな」だと感じるものは必ずあります。」 「だけど、価値観は人それぞれなわけです」 「自分が良いと思ったものが他人が良いと思うかは限らない」 「だから人は自分の素敵を否定されることを恐れ、「相手に伝える」ということをしなくなります」 「でも、アイさんはそれを恐れなかった。結果的には全てよく知っている場所ではありましたが、自分の素敵を相手に伝えようと一生懸命になってくれた。私はそれが一番嬉しかったんです」 「私は自分の知る素敵を人と共有していくことが大切だと思っています」 「これからは皆さんのような若い方の時代になります。皆さんがいろんな方と素敵を共有出来るようになれば、ネオ・ヴェネツィアはもっと素敵な街になりますよ・・」
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