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「…うん、そうしよっかな…」  わたしがもじもじしながら答えると、父の残念そうな声が飛んで来た。 「なんだ、今夜は一緒に食事できないのか」 「パパ、もう萌も高校生なんだし、色々あるのよ」  母はやけにはしゃいだ様子で、ねーー、と首を傾げて見せた。 「明日が合格発表だから、その後にお祝いで食事に行きましょうよ、お父さん」  うん、そうだな、という父の声を聞きながら、わたしは家族の分のご飯を茶碗に盛りつけるため、炊飯器の蓋を開けた。  立ち昇る炊き立てご飯の湯気が頬を撫でる。  その時ふと、遠い記憶が蘇えった。  あれは3年前の、中学校の卒業式の時だ。  あの朝もこうして、わたしは炊飯器の蓋を開けた。  そして、…あの朝も、今と同じように、わたしより早起きした家族が、こうしてリビングで迎えてくれた事を思い出す。 「なんか、いいね」  わたしは思わず呟いた。 「え?」 「今まで当たり前だと思ってたけど、…家族で一緒に迎える朝って、いいなあと思って。…こういう時間て、すごく大切だよね」 「…萌ちゃんたら」  母は笑いながら、 「まるでお嫁に行くみたいなセリフ」 「あ、やだ、ホントだね」  あははは、と3人で笑って、ふとソファの方を見ると、  …案の定、父が何か恐ろしいものを見てしまったかのような顔をこちらに向け、石のごとく固まっていた。
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