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「あのさ」
「……」
涙を浮かべ、口をとがらせて、黙って先生の顔を見つめる。
「確かにお前は卒業したけど、…その夜に早速、っていうのは、いくらなんでも…」
「……………」
「分かった分かった、泣くな」
先生は慌ててわたしの頭に手を乗せた。
「俺が言ったことをお前が全部真に受けるのは、今に始まったことじゃないし…それを予測していなかった俺も悪い。
それに、『母親に紹介したい』なんて…はっきり言うのが照れくさくて、直前まで何も言わなかったことも、悪かった。
ただ…。
…せっかく今までお前のご両親に…まあ、小さい嘘はあったけど、大きな嘘はつかずに二人で頑張って来たんだろ。
本命の合格発表だってまだなのに、卒業したその夜にいきなりそんなことするわけにはいかないよ」
「……」
「ちなみに、いきなり騎乗位もさせないし」
「……」
…先生は始めから、そういうつもりじゃなかったんだ…。
一人でドキドキしていた自分が情けなくて、…そして先生の冷静さがもどかしい。
わたしはがっくりとうなだれた。
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