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「なんだか騒がしくてごめんなさいね。いつもこんな感じなのよ」
通販化粧品会社の取締役を務めているというお母さんは、パワフルながらも少女のような可愛らしさを持った、魅力的な人だった。
おまけにとても優しくて、緊張するわたしを気遣い、何かと話を振ってくれる。
「昔から和真は好き嫌いが多くてね。
その点、哲哉は赤ちゃんの頃から何でも嫌がらずに美味しそうに食べてくれて、本当に育てやすかったのよ」
「そうなんですか」
…赤ちゃんの頃の、先生…。
むくむくっといつものアルバム欲が湧き上がって来た所で、春山先生の牽制するような視線を受け、わたしは渋々引き下がることにした。
「ところで椎名さんは、嫌いなものはある?」
「はい、豚足です」
ブフッと全員が吹き出す。
…すごい。息ぴったり。
「いや、そんなマニアックな食材までは聞いてないし」
和真さんが笑いながら、口元をナプキンで拭いている。
「かわいい、椎名さんて」
マミさんも可笑しそうに言った。
「とんそくってなに?」
翔平くんだけがキョトン顔で唐揚げを頬張っている。
…変だったかな…。
恥ずかしくなって頬を熱くしながら見ると、春山先生は声を出さずに肩を揺らして笑っていた。
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