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片づけを終え、みんなでリビングに集まってコーヒーを飲みながらニュースを見ていると、ふと視線を感じた。
顔を向けると、テーブルから少し離れた場所で、翔平くんがじっとこちらを見ている。
目が合うと、慌てたようにぷい、と逸らされた。
「……」
…くじけないもんね。
よく見ると、彼は何やら、手元にカードのようなものをいじっている。
わたしは中腰のまま、すすすっと翔平君の傍に近づいた。
「翔平くん、そのカード、なあに?」
「……」
無視…。
簡単に折れた心を抱え、しょんぼりと元の位置に退散しようとした時だった。
「…ライダーの、カード…」
「えっ」
「ライダーのゲームで…スキャンするんだよ」
「スキャン?」
翔平くんは、まるでむっとしたような顔で、こちらを見ずに頷いた。
…かっ。
かわいい…っ。
この顔、春山先生にそっくり…っ。
春山先生本人は、反対側に座って真剣な顔でテレビを見ている。
「すごいね、翔平くん。いっぱい持ってるね」
ここぞとばかりにおだてると、隣に胡坐をかいていた和真さんがにょきんと顔を出した。
「俺のこづかいがこのカードに化けてるんだよな、翔平」
「そうなんですか」
「そ。ゲーセンでゲームするのに、一回100円。で、そのたびにこれが1枚、出てくるわけ」
「てことは、1枚、100円…」
「そーゆーこと。…やってるうちに俺もはまっちゃってさ。親子揃って週末はゲーセン通いだよ。うまい商売だよなあ」
苦い顔の和真さんに頭を撫でられながら、翔平くんはちらりとこちらを見た。
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