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ローファーを履いて振り返ると、玄関先に集合した春山家一同がニコニコ笑顔を浮かべていた。
「椎名さん、翔平のカードの話、聞いてくれてありがとう。また遊びに来てね、喜ぶから」
マミさんが翔平くんの肩に手を置いてにっこり笑った。
その優しさにほんわかしながら、はい、と答える。
翔平くんの顔を見ると、こっそり和真さんといたずらっぽい笑みを交わしていた。
…末恐ろしい…。
翔平くんから発せられている魅惑の引力を改めて実感していると、
「椎名さん」
春山先生のお母さんが一歩前に踏み出し、わたしの右手を握った。
「今日は、来てくれてありがとう」
「い、いえっ、こちらこそ、お招きありがとうございます。美味しいごはんをご馳走様でした」
緊張しながら柔らかな手を握り返す。
お母さんはわたしの顔をじっと見つめてから、とても穏やかに微笑んだ。
「哲哉を、よろしくお願いします」
「……」
その瞳を見つめ返しているうちに、なぜか涙がこみ上げそうになり、私は慌ててそれを堪えた。
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