544人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
===============
視点 鷹山 蓮
===============
余計な事に気がついてしまったことを後悔している。
目の前に転送されてきたこの男は、シャークと同じ遺伝子を持つ。
もちろん、同一人物ではないことが分かっているが、オレにとって余計なプレッシャーだ。
『ほれ、どうした? 威勢よく俺を呼び出した割には大人しいじゃねーか。残された60分を楽しもうぜ』
右手に持つ鬼丸は既に抜刀済みだが、左手の龍王の楯――イグちゃんの反応はない。
万全な状態ではないが、待っている時間はなかった。
オレは鬼丸を横に振り上げ走り出した。
先に動いたのは作戦ではない。
強烈なカトラスの圧力に耐え切れず、受けるよりも先に攻撃せずにはいられなかっただけ。
走り込み、無言のまま刀身に留めてある【桜花一閃】をカトラスに向け放った。
奴はまだ刀の柄にすら手を掛けていなかったが、迫る桜色の刃よりも早く抜刀し、それを無効に――いや、三日月宗近の能力で吸い取った。
『随分と真っ直ぐな"不意打ち"だな。ほれ、返すぜ』
そう言って、カトラスは後ろ髪をなびかせながら刀を振った。
――!!!!
飛び出す刃はスキル【桜花一閃】そのもの。
むしろ、それよりも早い――
オレは鬼丸の刀身でカトラスの放った刃を弾いた。
オレは三日月宗近の能力を勘違いしていた。スキルを吸い込むだけじゃない。オリジナルのスキルをさらに強化できるんだ。
そ、そう言えば――レイドとの戦闘でカトラスは三日月宗近を使用してスキルを吸い取っていた。
オレが見ただけでも、三回。
ってことは、カトラスはレイドのスキル強化版を最低でも三つは使える。
掌からじんわりと汗が滲んでいくのを感じた。
シャークと同じK遺伝子。
反応しないイグちゃん。
奴はレイドのスキルを使用できる。
オレに不利な事実が次々と重なっていく。
最初のコメントを投稿しよう!