草原

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 別れを済ませ、漢から盛大に見送られて匈奴へと旅立った王昭君。もう生きては見る事の出来ない故郷を見えなくなるまで見つめていた。  そうして今度は見えて来た土地は、広々とした草原だった。その広大さに目を見張る王昭君。ここが、生涯を終える地なのである事に、身体を震わせた。それは、この地での生活に期待する思いから来る震えだった。  匈奴(キョウド)からの出迎えを受けて、いよいよ王昭君は、匈奴の王、呼韓邪単于(コカンヤゼンウ)と会う。彼こそが、王昭君が尽くすべき夫だった。  単于(ゼンウ)とは匈奴での称号で漢では王の意味を持つ、と王昭君は呼韓邪単于から教わった。かなり年上だが、逞しい呼韓邪単于は、王昭君の目に頼もしく見えた。
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