後宮

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 王昭君は、女性にして学のある人だった。王家は、とてつもない名家ではないが、それなりに名が通った家であり、昭君は利発な美少女として近所で評判だった。  その昭君に目をつけていたのが、後に因縁の相手となる毛延寿である。画家の卵として、ちょっとは名が知れて来たが、まるで蛇のような目をした男であった。  そんな男に目をつけられた昭君は、道すがら延寿を見ると気付かないふりをして通りすぎる。延寿が気軽に声をかけて来ない事を知っていたからだった。  昭君は、決して暗くて高慢な嫌な女ではない。明るい娘でもあったが、未だ年端もゆかぬ娘を上から下まで舐めるように見る延寿が気味悪くて仕方がなかったのだ。
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