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さてさて。
加藤次景廉(かとうじかげかど)という人が居た。
彼の先祖は、
「都をば霞と共に出だしかど 秋風ぞ吹く白川の関」
という立派な歌を詠んだ能因入道(のういんにゅうどう)で、彼はその4代目の子孫である。
猪突猛進の猪武者で、とっても強い。
彼はいつも頼朝のところに来ていたのだが、最近は不審に思われて集まりにも呼んでもらえなかった。
だから自分で準備していたのだけれど、妙な胸騒ぎがして、
紫縅(むらさきおどし:鎧の一部)の腹巻に、太刀(たち)を差し、子どもの洲崎三郎(すさきのさぶろう)を連れて頼朝のもとに向かった。
頼朝の家に入ってみると、頼朝は手足に防具をつけて、小さい長刀(なぎなた)を持ったまま、縁側のところに立っている。
一体何が起きてんだ…?と思っているところに、頼朝は景廉を見るなり、
「おぉ、よぉ景廉じゃんっ!こっちこいよっ。
この間は不審なことがあって呼ばなかったけど、いやーうん、来てくれたんだ。
俺たちってば天皇からの命令で、平家を滅ぼすんだわ。
まずは兼高を倒そうと思って、北条さんと佐々木たちに行ってもらってんの。
倒したら火ぃ点けるとか言ってたなぁ…。
まだ煙見えないし、殺り損ねたかな?
いやぁもう心配だねぇ~。
ところでなんだけど、ここ、人が居なくなるからさ、景廉はここに居てお留守番しててよ」
と言う。
加藤次は聞かずに、
「そんなに心配すんなや。
色々あったけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないやんか。
あんたの家、案外、人多いし、わいが居なくても平気やろ。
今夜の夜討ちは、わいが行くで。
あんたに命捧げとるんやし、さっさと兼高を討ち取ってくるわ。
ほんじゃま、行ってくるでー」
と言い捨てて立ち上がる。
「ちょっw待てって景廉wお前にプレゼントあるから持ってけよw」
と言って、緋縅(ひおどし)の鎧に、白星(しらほし:白丸)のついた兜(かぶと)と、夜討ちには柄の長いものがいいと言って、こっそり持ってきた小長刀(こなぎなた)を出してくれた。
景廉はこれを貰って喜び、頼朝の仲間の一人と(来るとき連れてきた)洲崎の2人を連れて、八牧(やまき)の家に急いだ。
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