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甲高い金属音が長い間響き渡るーー
互いの刃が接している面は先端のほんの僅か…
両者とも、芯の中心一点を捉えた見事な一撃と言えた。
それと同時に、二人の腕に高圧電流が流れていくような激しい痺れと痛覚が襲う。
ーーカラン…
一方の手から薙刀が抜け落ちる。
「悔しいけど…」
地面には紫の藤の花が咲く。
「私の負けですね」
互いに一礼すると、勝者は困惑した様子で、逆に負けたはずの相手の方が晴れやかな表情をしていた。
「私の勝ち…で、いいんでしょうか…」
今一つ勝利を自覚出来ないでいると、敗者はいつも通りの慈愛に満ちた優しい笑みを向ける。
「私の手を見て」
そういって掌(てのひら)を見せると、その手は小刻みに震えていた。
「まだ握力が戻らないの、でもあなたは自分の得物をしっかり握れている…それが今のあなたの実力なの」
目配せをすると、コバヤカワは小さく頷き、推薦状を勝ち取った者に向けて手を振り下ろす。
『勝者、レイカ!』
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