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. 駅は無人のホームへと着く。 開いたドアの隙間から雪がぱらぱらと舞い降りてきて、冷たい空気が鼻先を痛くする。 そんな中、ホームに降りた風見君が、しっかりした口調で伝えてくれた言葉。 「一応空けておくけど……。用事が出来たら御免な。」 「へ……?」 最初は何のことを言っているのか分からなかったけれど、少し言葉に迷っている彼の姿を見ながら、それが23日の演奏会のことだと気づいた。 「いつも黙って色々聞いてくれるから、その御礼だよ。」 「本当に……?」 「うん。じゃあ……また明日な。」 夜から降り始めた雪が、今季初めての積雪へと変わったその日。 帰り際に、初めて風見君が手を振ってくれた。 いつにない穏やかな顔で。 ねえ……私、少しは自惚れてしまってもいいのかな? 風見君にとっての彩月さんには、まだ程遠いけれど。 彼に想いを寄せる他の女の子よりは、一歩前を進んでいるんじゃないかって。 だって、初めて出会ったときよりも、あなたの傍が心地いいから。 もう、何も無かったころには戻れないと ――― 気づいてしまったから。 .
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