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. 驚かせようと、ここで待っていたことは伏せておいたけれど。 ここに着く時間を執拗に訊いた私の本意に、頭のいい彼が気づかないはずがない。 「早く……会いたくて。迷惑だった……?」 「迷惑じゃないよ……凄く嬉しい。俺も……早く、会いたかったから……。」 そう言って風見君は、私を優しく抱きしめてくれた。 すっかり冷え切ってしまっていた頬が、彼の温もりによって熱を帯びていく。 そして何よりも彼の言葉が、この10日間の私の心の空白を埋めてくれた。 抱きしめられながら、耳元で彼が囁いた言葉。 「……彩月を忘れるために、この街にやってきた。 けれどもこれからは、唯と一緒にいるために、この街にいたい……。」 「……。」 「そんな不純な動機だけれど、俺……ここにいてもいい?」 そんなの、当然だよ……。 彩月さんとの過去の柵を乗り越えられた今、風見君がこの街に残る理由はないけれど……。 私のためにここに残りたいと言ってくれた想いは、どんな幾千もの愛の言葉よりを囁かれるよりも価値がある。 「勿論だよ……。私はずっと、ここにいるから……。」 ねえ……風見君。 人を好きになる素晴らしさも、想いが繋がる尊さも。 全部、あなたが教えてくれた。 だから私は今も、あなたが忘れられない。 あなたとの優しい思い出が―――  今はただ、切なくて仕方ないよ……。 .
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