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下駄箱で靴を履きかえて、教室まではあと少し。
寒い廊下に温かな日差しが差し込む。
雪は止んで、雲の隙間から見えた青空を窓から眺めていると、隣にいた百香は静かに口を開いた。
「私……失恋したんだ。」
「えっ、誰に?メールの大学生?」
って……メールの大学生の人とは、随分前に終わったって言っていたっけ。
いつも私の相談にばかり乗ってくれるから、百香はあまり自分のことを話さない。
男性遍歴が多いことだけは確かだが……。
すると、彼女はふと足を止め、俯きかけた顔を上げることなく呟く。
「……颯。」
「え!?」
「驚いちゃったよね? 颯のことは、誰にも話していなかったから……」
「……。」
驚いたのは言うまでもない。
けれども同時に、罪悪感でいっぱいになった。
颯の気持ちを知っていたから、彼女にかけてあげられる言葉が見つからない。
「……そんな顔しなくても、私……ずっと知ってたから。」
「え……?」
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