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「颯が唯のこと好きだって。私じゃなくても、誰だって気づくと思うよ。
唯と他の女の子に対する態度、全然違うんだもん。」
そう言って、百香は切なげに笑う。
今までずっと一緒にいたのに、彼女のこんな表情を見るのは初めてだった。
それだけ、颯のことを本気で好きだったのだろうか……。
「クリスマスの日にね……唯から連絡あった後、私、颯に会いに行ったの。
誘われてなかったけれど、颯の気持ちを考えると放っておけなくて。」
「……。」
「その時に……ずっと好きだって言っちゃった。あっさりフラれちゃったけれど。」
百香が色んな男の人と付き合うのは、颯への想いを断ち切るためだったのかもしれない。
でも私は、颯の気持ちには応えられない。
颯が百香の気持ちに応えることができたら、全てが上手くいくのに。
皆が幸せになれるのに……。
「颯……多分、まだ唯のこと諦められないと思う。
風見と幸せになった唯に言うのは酷かもしれないけれど、アイツ……唯のこと、本気で好きだったから。」
「……。」
「だから、振られて悔しいけれど……アイツの気持ちが痛いほど分かるんだ。」
百香はそれ以上、何も言わなかった。
私を責めるような言葉も、颯を庇うような言葉も。
ただ不意に見せる、彼女の寂しげな横顔に、胸の奥がぎゅっと抉られる気持ちになった。
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