【9】

12/19

4083人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
***** 大きな庭のある和風な雰囲気の平屋。 そこは風見君の御祖父さんの家で、彼の住まいだ。 「どうぞ、上がって。」 「お邪魔します……。」 広々とした玄関、中から洩れる温もりが冷え切った身体を包み込んでくれる。 ここが、風見君が生活している空間なんだ……。 そして、鈴音とともにやって来たのは、彼の小さな家族だった。 「かわいい!! 猫だぁ!」 私を出迎えてくれたのは、丸い尻尾の三毛猫だった。 ミャーと可愛らしい鳴き声を上げる。 そっと首元を撫でると、ゴロゴロと音を鳴らしながら満足気な顔をした。 「ミケが家族以外に甘えるなんて、珍しい。」 「そうなの……?」 「うん。もしかしたら、唯のこと……俺の大切な人だって気づいているのかな?」 そう言って、同じようにしゃがみ込んで、ミケの身体を優しく撫でてあげる風見君。 その横顔は見惚れそうになるくらいに、とても優しげだった。 するとそこに、ゆっくりと足音が近づいてくる。 「あら、いらっしゃい。」 .
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4083人が本棚に入れています
本棚に追加