4082人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
.
腰にエプロンを巻いていた彼女は、言うまでもなく風見君の御祖母さんだ。
柔らかに微笑む姿が、風見君と似ている……。
「あ、こんにちは。初めまして……樋口唯です。」
軽く自己紹介をすると、彼女はニコッと明るい笑顔で応えてくれた。
「あなたが唯ちゃんね。章ちゃんから、連れてくるからって電話あって……。
こんなところで立ち話もなんだから、早く上がって下さいね。」
「はい、お邪魔します……」
長い廊下を進むと、ミケも後ろからご機嫌についてくる。
私の足に擦り寄りながら。
初めて入った彼の部屋は、余計なものが何ひとつなく綺麗に整えられている。
ずっと暮らしていた場所が別にあるのだから、こんなものなのかな……。
用意してくれた座布団に座りながら、電気ストーブにスイッチを入れている背中に話しかけてみる。
「章ちゃんって呼ばれているんだね。可愛いね。」
からかうつもりは無かったのだけれど、どうやら彼には勘違いされてしまったようで。
私に仕返しをするように、意地悪な口調で言ってくる。
「……だったら、唯も呼んでいいよ。」
「へ!?」
「いつまでも苗字に君付けじゃ、他の人と同じだろ?」
.
最初のコメントを投稿しよう!