【9】

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. 腰にエプロンを巻いていた彼女は、言うまでもなく風見君の御祖母さんだ。 柔らかに微笑む姿が、風見君と似ている……。 「あ、こんにちは。初めまして……樋口唯です。」 軽く自己紹介をすると、彼女はニコッと明るい笑顔で応えてくれた。 「あなたが唯ちゃんね。章ちゃんから、連れてくるからって電話あって……。 こんなところで立ち話もなんだから、早く上がって下さいね。」 「はい、お邪魔します……」 長い廊下を進むと、ミケも後ろからご機嫌についてくる。 私の足に擦り寄りながら。 初めて入った彼の部屋は、余計なものが何ひとつなく綺麗に整えられている。 ずっと暮らしていた場所が別にあるのだから、こんなものなのかな……。 用意してくれた座布団に座りながら、電気ストーブにスイッチを入れている背中に話しかけてみる。 「章ちゃんって呼ばれているんだね。可愛いね。」 からかうつもりは無かったのだけれど、どうやら彼には勘違いされてしまったようで。 私に仕返しをするように、意地悪な口調で言ってくる。 「……だったら、唯も呼んでいいよ。」 「へ!?」 「いつまでも苗字に君付けじゃ、他の人と同じだろ?」 .
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