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想いが繋がったときから、風見君は私を「唯」と呼んでくれている。
それが他の人とは違いという明らかな証で、私はそれがすごく嬉しくて……。
だから真摯に、その言葉を受け止めてしまった。
「……章、ちゃん……。」
「……。」
「……って、言わせておいて照れないでよ!!」
「唯だって、顔真っ赤だろ!」
そう言って、指先で私の頬に触れる。
たったそれだけで、こんなにも恥ずかしくて堪らなくて、心臓が壊れてしまいそうなくらいに激しく高鳴って。
「唯……。目、瞑って?」
真剣な顔つきをした彼が、そっと呟く。
その言葉に応えるように瞳を閉じると、温かいものが唇に一瞬だけ触れた。
ゆっくりと目を開くと、至近距離にある綺麗な顔。
まだ微かに残っている感触を指で確認しながら、私は彼に言った。
「私……初めて、だったの。」
「……知ってる。」
「風見君が初めてで……嬉しい。」
「俺も、唯の初めてになれて……嬉しい。」
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