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初めてのキスの感触を唇に残したまま、私たちは本来の目的でもある勉強を始めた。
学校の授業よりも数段分かり易い説明に、もし彼が先生だったら、間違いなく勉強に励んでいたと確信した。
それから少し早めの夕飯を御馳走になって、すっかり夜も遅くなった頃。
窓の外では激しく雪が降り続けていた。
帰るのが億劫になるけれども、いつまでも長居しているわけにもいかない。
適当に勉強を切り上げて、玄関先で帰る支度をしていた。
するとそこに、御祖母さんがやってくる。
「唯ちゃん、電車停まっているみたいだけど……大丈夫?」
「え、そうなんですか!?」
「おうちの人に連絡して、迎えに来てもらったほうが良いんじゃないかしら……。」
「あ……でも、今日は頼める人がいないので……電車が動くまで待ってみます。」
普段なら雅さんにお願いするところだけれども、週末からの遠征で今夜から家を空けている。
だから、仕方ないけれども他に方法はない。
風見君や彼の家族を心配させないためにも、笑顔で応える。
「私たちが運転できたら良かったんだけど……ごめんなさいね。」
「いいえ、そんなこと全然構わないです。気になさらないで下さい。
こちらこそ、美味しい夕飯を御馳走になって、本当にありがとうございました!!」
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