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そう言ってお辞儀をする私に、黙っていた風見君が口を開いた。
とんでもない言葉と共に。
「だったら今夜、うちに泊まっていけば?」
「へ!?」
「だって、家族の人……誰もいないんだろ? 明日は土曜日だし、またここで勉強すればいいじゃん。」
そういう問題じゃないような……。
でも、傍にいた御祖母さんも大賛成の様子で笑顔を浮かべる。
この大雪の中で、動くか分からない電車を待っているよりは、堅実的な案だとは思うけれど……。
「それに俺……唯がこんな中で、ひとりで帰るなんて心配だよ。
迷惑だったら仕方ないけどさ、俺たちに遠慮しているだけなら……泊まっていってよ。」
「……うん。」
迷惑なんかじゃない、本当は嬉しくて胸がドキドキしているくらいだ。
大好きな人と、一晩中ずっと近くにいられるなんて……。
「じゃあ客間に荷物置いてきなよ。後で、着替えとか持って行くから。」
「分かった。ありがとう。」
こうして今夜は、風見君の家に泊まることになったけれど、冷静になって状況を把握する。
ひとつ屋根の下に家族がいるとは言っても、寝静まってしまえば関係のないことで。
もしかしたら風見君は、そういうことも計算済みなのかな……なんて。
真面目で優しい彼が、そんなこと考えるはずなんてないのに。
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