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恥ずかしくて顔を背けながら答えると、彼はゆっくりと顔を近づけてくる。
唇を軽く食むように触れ、そしてすぐに少し長めの口づけ。
名残惜しく離れて行った唇に、ちょっとだけ意地悪な言葉をかけてみた。
「1回って言ったのに……」
「だって、唯も拒まなかったから……」
そこまで言うと、今度は自然と引き寄せられるように、私たちは顔を近づけ合っていた。
映画やドラマで見るような、流れるようなシチュエーション。
そんな状況に自分が陥っていることが、不思議な感じもありつつ照れ臭い。
「唯……もっと、力抜いていいんだよ。緊張しすぎ。」
「……緊張するよ、こんなの……。」
次の段階に、いつ進んでもおかしくないような場面。
終わらないキスの連続に、風見君の本音が見えたような気がした……
……けれど。
「大丈夫だよ。今日は、キスだけで我慢するから……」
「え?」
「今夜は……そういうつもりで、唯のこと泊めたわけじゃないから。」
そして最後に額に優しいキスをしてくれ、彼は「おやすみ」といって部屋を出て行った。
私の心を、掻き乱すだけ掻き乱して……。
本当……狡い人だ。
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