【9】

19/19
4066人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
. 近づきすぎると心臓が破裂しそうなくらいに苦しいのに、離れてしまうと少し寂しい。 慣れない距離に微かな戸惑いと歯痒さと、それから程よい緊張感とが入り混じる。 もう、寝ちゃったかな……。 もう少し、傍にいたかったかな……。 そんなことを考えながら、ゆっくりと微睡の中に落ち始めていると、頭元に置いていた携帯電話が暗闇の中で光った。 こんな時間に誰だろう……? ―― 唯、もう寝た? 壁の向こうからのメール。 それは私と彼が、同じ想いでいることを物語っていた。 ―― ううん。まだ起きているよ。 そう返事をするよりも、隣の部屋に会いに行ったほうが断然に早いのに。 そこまでの大胆さはない私は、風見君の温もりを残したパーカーに顔を埋めることが精一杯。 想いが繋がるって、こういうこと……なんだよね。 頬に触れた温かい手、柔らかい唇の感触。 少し照れた彼の顔に、壊れそうな程の心臓の音。 目を閉じれば、走馬灯のように蘇ってくる1日の出来事。 こんな愛しい日々を積み重ねて、きっと私たちはより深く結ばれていくのだろう。 初めての恋も、初めてのキスも、教えてくれたのは彼だから……。 この変わらない想いと共に。 .
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!