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―― 2003年 春
冬の厳しい寒さが過ぎると、日差しが少し心地の良い春の予感。
新しい教室の窓際から、雪解け間近の風景を眺めていると、ご機嫌な様子の百香がやってくる。
「唯、新入生に可愛い男の子がいたよ!」
「相変わらず、素早いリサーチだねぇ……」
「でもね、実は予備校にも超格好いい人がいてさぁ。その人が………」
この春休みから、釧路の予備校に通い始めた百香。
本当に勉強をしているのか怪しい発言も多いが、それでも鞄の中にはいつも参考書を持ち歩いている。
楽譜とお菓子類しか入っていない私の鞄とは大違いだ。
私たちの高校生活も、残すところついに1年を切ってしまった。
今年は受験生。
微温湯に浸かりながら曖昧にしていた進路について、本気で考えなければいけないところ……
「唯、携帯光ってる。」
「あ、ほんとだ……」
机の上に乗せていた携帯が、青色の光を点滅させる。
それは、大好きな人からのメールが届いた証だ。
今日は学校が終わったら、一緒にお昼を食べて、映画を見に行く約束をしていた。
多分きっと、その連絡かな……。
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