4069人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
.
「な、ならないよ!!」
「そう? 唯が気づいていないだけで、向こうはずっとチャンスを狙っていたかもよ?」
「そんなこと………」
デートのときは手も繋ぐ。
2人きりになればキスもする。
しかし、それ以上のことはまだ考えられない。
それは風見君も同じだと思っていたけれど、百香の言うとおり、私が鈍感だっただけ……?
「ごめん。唯の反応があまりに初々しいから……意地悪言っちゃった。」
「……もう、冗談はやめてよ。」
そう言いながら、膨れっ面で仕返しをするも、小さく微笑まれるだけで効果は全くなかった。
不意に見せる大人びた柔らかな笑顔は、百香の魅力でもあり反則技だ。
「きっと……唯は、大切にされているんだよ。それは幸せなことだよ。」
「……。」
「私も早く……そんな相手に、出逢えたらいいのに。」
百香はもう、颯のことは吹っ切れたのだろうか……。
あれから他の男の子との話は何度か聞くけれども、颯の話は一切出てこない。
今までは日常茶飯事だった皮肉さえも。
私も、あの告白をされた日から颯とは、何となく気まずくて距離を置いてしまっている。
色んな女の子と相変わらず遊び回っているという噂を、人伝に聞くくらいだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!