【10】

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. 前に一度だけ話してくれた夢の話。 辛い過去から目を逸らさずに、きちんと目標として掲げられる彼を、心底格好いいと思った。 「……風見君は、明確な夢があっていいなぁ。」 「それは唯のほうだろ。好きなことを夢にできるなんて格好いいじゃん。」 「……。」 「俺は、そんな真っ直ぐな唯が……好きだよ。」 その言葉は、周りの雑音を掻き消す威力があった。 実際には周囲は騒がしいままだったけれど、私たちを包み始める特別な雰囲気。 「……ちなみに、唯はどこの音大受けるの? 札幌?」 「ううん。東京の大学に……お母さんの知り合いの先生がいて。その人のところで勉強したいなぁって……」 雅さんに連れられて、何度か演奏会にも出向いたことがある。 母と同じ舞台で活躍していた人で、母とは古くからの親友でありライバルで。 初めて彼女に会ったとき、その独特な奏法に一瞬にして心を奪われた……。 「じゃあ……頑張って、一緒に合格しないとな。」 「え……?」 「同じ東京の空の下なら……こんな風に、いつだって会えるしさ。」 そう言いながら、風見君は嬉しそうに笑いかけてくれる。 その笑顔は私の原動力だ。 .
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