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そして、その夜。
裕子おばちゃんを訪ねていた私は、帰りに偶然にも颯と会った。
「あ……おかえり。」
「……おう。」
颯は制服姿のままで、いつもの派手な通学用のリュックを背負っている。
もしかして今までずっと、学校に残って勉強していたのだろうか……。
「ねえ、颯。」
「ん?」
「噂で聞いたんだけど、勉強しているって本当?」
「……俺が勉強したら、噂にされるほど変か?」
「変だよ。」
「……そーか。」
私の皮肉にも、彼は全く反応しない。
今までなら、言い合いになっていたに違いないのに。
それから数秒間の沈黙が続き、他に話す言葉も見つからないので、そのまま家に帰ろうとした。
その時だった……。
颯の切なげな声に、不意に呼び止められる。
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