【1】 Introductory chapter

21/21
4070人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
. 「どうして?」 「唯はさ……あんな気難しそうな奴なんかよりも、一緒にいて楽しい人を選ぶべきだ。例えば、俺とかさ……」 「え、それは嫌。」 真剣な顔つきをするものだから、何を言い出すかと思えば……。 最後のひとことに露骨に嫌な顔を浮かべた私をみて、百香はいつものようにケラケラと楽しそうに笑う。 「ざまあみろ! 颯のばーか。」 「うるせー。」 あまりに楽しそうに百香が笑うものだから、ついには私と颯も伝染したように一緒になって笑った。 高校生が沢山乗った騒がしい車内で、私たちの馬鹿みたいな笑い声に、他の人が気づいていたとは思えないけれど。 それでももしかしたら彼は気づいてくれるかもしれないと、そんな期待をしながら横目でちらりと見た。 しかし彼は、我関せずといった感じで、ただ窓の外を見つめているだけ。 その瞳は一体、何を見つめているのだろうか。 いつか私のほうを一瞬でも、見てくれる日が来るのだろうか。 そしていつかこんな風に、あなたの表情に咲いた笑顔を見られる日が来るのでしょうか……? .
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!