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「どうして?」
「唯はさ……あんな気難しそうな奴なんかよりも、一緒にいて楽しい人を選ぶべきだ。例えば、俺とかさ……」
「え、それは嫌。」
真剣な顔つきをするものだから、何を言い出すかと思えば……。
最後のひとことに露骨に嫌な顔を浮かべた私をみて、百香はいつものようにケラケラと楽しそうに笑う。
「ざまあみろ! 颯のばーか。」
「うるせー。」
あまりに楽しそうに百香が笑うものだから、ついには私と颯も伝染したように一緒になって笑った。
高校生が沢山乗った騒がしい車内で、私たちの馬鹿みたいな笑い声に、他の人が気づいていたとは思えないけれど。
それでももしかしたら彼は気づいてくれるかもしれないと、そんな期待をしながら横目でちらりと見た。
しかし彼は、我関せずといった感じで、ただ窓の外を見つめているだけ。
その瞳は一体、何を見つめているのだろうか。
いつか私のほうを一瞬でも、見てくれる日が来るのだろうか。
そしていつかこんな風に、あなたの表情に咲いた笑顔を見られる日が来るのでしょうか……?
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