4109人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「ねえ、待って!!」
「ん?」
「どうして……百香のこと、振ったの?」
ずっと……颯には、訊けなかった。
百香に告白された件も、それからのことも。
私が原因なら尚更……。
「理由、知りたいのか?」
「うん……。」
すると、颯はあからさまに大きな溜息を吐いた。
非難するような視線を向けながら。
「前にも言ったけど……俺には、好きな女がいるから。」
「……。」
「ずっと好きだったのに、そいつは他の男のことしか見ていなくて。
俺のことなんて眼中になくて、いつもデリカシーのないことばかり言ってきて……。
それでも俺は……そいつ以外の女とは、真剣に向き合うつもりはない。」
そう言い切ると、颯は何を思ったのか、私の頬の辺りに手を伸ばしてくる。
けれども、私が顔を背けて拒んだから、何もせずにそのまま手を下げた。
「……分かったら、さっさと帰れよ。」
「……。」
「お前、本当……デリカシーねえな。」
去り際に、颯が呟いた言葉が胸に突き刺さる。
その声が、少し震えていたから。
.
最初のコメントを投稿しよう!