【10】

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. 「ねえ、待って!!」 「ん?」 「どうして……百香のこと、振ったの?」 ずっと……颯には、訊けなかった。 百香に告白された件も、それからのことも。 私が原因なら尚更……。 「理由、知りたいのか?」 「うん……。」 すると、颯はあからさまに大きな溜息を吐いた。 非難するような視線を向けながら。 「前にも言ったけど……俺には、好きな女がいるから。」 「……。」 「ずっと好きだったのに、そいつは他の男のことしか見ていなくて。 俺のことなんて眼中になくて、いつもデリカシーのないことばかり言ってきて……。 それでも俺は……そいつ以外の女とは、真剣に向き合うつもりはない。」 そう言い切ると、颯は何を思ったのか、私の頬の辺りに手を伸ばしてくる。 けれども、私が顔を背けて拒んだから、何もせずにそのまま手を下げた。 「……分かったら、さっさと帰れよ。」 「……。」 「お前、本当……デリカシーねえな。」 去り際に、颯が呟いた言葉が胸に突き刺さる。 その声が、少し震えていたから。 .
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