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私があの人を初めて電車で見かけてから、ちょうと1週間の時が流れた。
この1週間、遠くから彼を見つめることしか出来なかったけれど、そんな中でも気づいたことが幾つかある。
まずは言うまでなく毎朝あの電車に乗ってくること。
携帯を左手に持って操作していることから、どうやら左利きだってこと。
身長は恐らく175センチちょいくらい。
それから……
「風見って、東京からの転校生なんだってよ。」
「え……?」
遅刻すれすれに教室に入ってきた颯は、迷うことなく私のところへやって来て。
そして何も前触れもなくそんな話をしてくる。
っていうか……カザミって誰?
「ユカの弟が青陵の2年だから、訊いてみたんだよ。」
青陵の2年、そのキーワードだけで私の頭に浮かんだのは、あの彼のことだった。
颯が教えてくれた彼の名前は『風見君』といって、この夏休みに東京から越してきたという。
「ユカって……年上の彼女さんだったっけ?」
「元彼女な、昨日別れたから。」
「はぁ!? またあんたはそんな軽率な……本当に酷い奴。女の敵だね、長生きできないよ。」
「だってユカのやつ東京の大学に推薦決まったから。遠距離なんて絶対に無理だし、ズルズル続けるくらいなら今かなって。」
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