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目を閉じれば、嫌でも蘇ってくる想い出。
10年近くも経つというのに、未だにこの時期が来ると辛さで気が遠くなりそうになる。
何も守り通すことのできなかった無力な手。
その指先が奏でる音だけが、今の私の生きる術だ。
―― 何があっても、ずっと傍にいるから
そんな小さな約束を、あなたもう忘れてしまっただろうか。
時が経つにつれ忘れられると思っていた。
それなのに、心に錆びついて消えそうにない想い。
あの冬に戻れたら……。
そう願わない日は、1日たりとも無い。
生涯かけて大切にしようと誓ったもの。
同時にふたつ失った、白い景観に包まれたこの季節。
今、あなたは……どこで何をしているの?
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